「おとうさん、あきさがしにいこうよ」
「あきさがし?」
「あきっぽいものをさがすの。いこうよ」
11月のよく晴れた日の午後、娘が「あきさがし」なる提案をしてくれた。なるほど、あきさがし。それは面白そうだねということで、市場町上野段〜町筋エリアをゆっくり歩いてまわりました。ちなみに、徳島にUターンしてはや5年になりますが、びっくりするくらいに歩かなくなりました。もっぱら車・車・車の毎日。数百メートル先の場所に行く際にも歩かずに、迷わず車を使います。そ、それでいいのだろうか…
とにもかくにも、あきさがしに出発です。
「はい、キンモクセイ!」
歩き始めるやいなや、いきなり「あき」を発見。キンモクセイのいい香りは、秋の到来をしっかりと感じさせてくれますね。
「これは****!(聞き取れず)これもあき!」
すでに僕よりも花に詳しくなった娘。嬉しいなあ。
「あれは、かき!!!!!」
そういえば最近、娘がダジャレを覚えました。そして今振り返ってみるとおそらく彼女なりの、最大限の、かつ渾身のダジャレだったと思うのです。そうとは知らずに、笑いもせずに「そうだねー」と真顔で返事してしまった僕。すると当然、ものすごく不満そうな顔をして僕をにらむ娘。あ、ダジャレだったのね。ごめんなさい。
当たり前ですが、歩くとやっぱり細かな事に気が付きますね。そして大人になってから気付いたこと。それは、こどもの目線でしか気付けないものがあるということ。次々といろんなものを見つけ出す娘の目線と、僕の目線とでは少しだけ見えているものが違っていたのです。歩きながらそんな発見をしつつも、いろんなところで何かを見落としてしまっていることもあったのかもと反省したり。でも、娘がいろいろとこんなふうに考えるきっかけをくれるのでやっぱり嬉しい。
ちなみに。この日は車では通らない場所も歩いてみました。あえて細い道を選んで進む。すると、彼女にとっては見慣れない風景が急に目の前に広がる。「いちばちょうにこんなばしょがあったんだね」と娘。そうです。いろんな場所があるんですよ。せっかくなので僕が好きな風景を見てもらいました。
気がつけばもうすぐ日没。あたりも急に暗くなり始めたので家路を急ぎました。
途中、うれしそうに「こんどはちがうばしょでまちあるきしたい!」と娘。「おお、いいねえ。どうしてそう思ったの?」といろいろと聞くと、自分の住んでいる町のことを知ると楽しくなるからだそう。なんだか嬉しくなった僕は、「行こう行こう。今度は違う場所を歩こうよ」と答えたのでした。
続?
(文・写真:松本剛)