
「あ、そうそう。霊神宮はなあ、春になったらきれいな桜が咲くんでよ。毎年見るんが楽しみなんよ。よかったらいっかい見に行ってくださいねえ」
昨年の2月某日。とある仕事で取材をしていた際、近隣住民の方からこのようなお話をいただいた。それから2ヶ月後、そろそろ頃合いかなと思い霊神宮を訪れるときれいに咲く桜が僕を出迎えてくれた。
「やっぱり桜と神社の組み合わせはいいなあ」
そう思いながら、小さな階段をゆっくりと歩き霊神宮を参拝。「お邪魔します」と一言添えて、あらためて桜を眺めることにした。
霊神宮の桜

見上げると、青空を背に勢いよく咲く桜がとても美しい。耳をすませると聞こえてくるのは、春の訪れを喜ぶ鳥の鳴き声やさらさらと流れる水の音。ちなみに付近には「鎌倉泉」という泉が湧き出ていて、一昔前はそれを元にお酒も作られていたそう。私自身、Uターン前は鎌倉市に住んでいたので自然と親近感がわく。
その後は半時間ほど写真撮影をしたり、ぼうっと桜を眺めたりして過ごす。こういう時間は、とても贅沢だ。

いい桜が見れてよかった。満足した気持ちで帰ろうとすると、前方から男性が近づいてくる。
よく見ると…
「あれ?松本さん!?笑」
「えっ!?あれ!なんで!?笑」
なんと、お仕事でお世話になっている方だった。聞くと、僕と同じく霊神宮の桜を見に来たのだそう。
「いやあ、松本さん。この場所をご存知でしたか」
「いえいえ、ご近所の方から教えていただいたんです」
「そうなんですね。ここ、いいですよねえ。好きなんですよ僕」
「はい、僕もお気に入りの場所になりましたよ」
「ちなみに、今日はどんなレンズを?」
「今日はですね…」
こんなふうにしばらくの間、カメラ談義や世間話をして盛り上がった。会話の内容は何気ないものだったけれど鮮明にこの時のことを記憶しているのはきっと、桜の木の下というロケーションのおかげだったかもしれない。そして、この記憶のおかげだろうか。以後はなんとなく霊神宮が気になるようになり、時間があるときに訪れては、参拝するようになった。
土地に対する良い思い出や記憶は、人をゆるく結びつけるのだと思う。そして、こういう感情を、「愛着」と呼ぶのかもしれない。
霊神宮の桜 | まとめ
霊神宮の桜
見頃:4月上旬(2025年)
住所:〒771-1703 徳島県阿波市阿波町岡地176−1
(文章・写真 松本剛)
