天の真名井(天然記念物 まな井)

  • URLをコピーしました!

以前ご紹介した建布都神社の東側にある、「天然記念物 まな井」。石碑によれば、これは古事記や日本書紀にも出てくるものだそうで、そんな伝承がこの市場町にもあったとはびっくりです。せっかくなので、詳しく見てまいりましょう。

目次

天真名井の概要

天の真名井の「天の」とは高天原のことで、「真名井」は神聖な泉のこと。石碑には次のように書かれています。

天然記念物あま井
この清水は古事記や日本書紀にある天真名井(高天原の神聖な泉)をここへ移したと言い伝えられている

平成十五年十一月 市場町教育委員会

天然記念物あま井の石碑より

古事記や日本書紀としっかりと書かれていますね。せっかくですので、天の真名井が登場する古事記の箇所を引用してみましょう。

故ここに各天の安の河を中に置きて誓ふ時に、天照大御神、まづ建速須佐之男命の佩ける十拳劔を乞ひ渡して、三段に打ち折りて、瓊音ももゆらに、天の眞名井に振りすすぎて

岩波文庫「古事記」P36より

以下、簡単に内容についてご説明いたします。

上記箇所に登場している「天照大御神(アマテラス)」と「建速須佐之男命(スサノオ)」は伊邪那岐(イザナギ)の子で、アマテラスは高天原を、スサノオは海を治めるようイザナギから言い付けられていました。

ところがスサノオは亡き母イザナミのことを思って泣くばかりで、ちっとも海を治めようとしません。イザナギは「なぜそのように泣くのか」と聞くと、「亡き母のいる国に行きたい」と答えるスサノオ。これに激怒したイザナギは、スサノオを追放してしまったのです。

さて、スサノオは母の国に行く前にアマテラスに挨拶をしようと高天原に向かいました。ところが、スサノオが現れるとアマテラスは「まさかスサノオは、この国を奪いにやってきたのでは」と誤解してしまいます。なんとか疑いを晴らそうとしたスサノオは、「誓約(うけひ)」という占いで身の潔白を証明しようとします。その際につかわれたのが、「天の真名井」の清水でした。

建布都神社の周辺はとても静かで穏やかで、だからこそこの水の音が何とも心地よくて。にぎやかなまちも好きですけど、やっぱり私はこういう空間が好きです。

あとがき

古事記に出てくる天の真名井がこの市場町にも移されていたという伝承はとても興味深く、もっともっと掘り下げてみたいテーマの一つです。そういえば、阿波市に限らず徳島県には面白い伝承が数多く存在しています。歴史という観点から徳島県を見てみると、もっともっと面白くなるかも?

(写真 / 文章:松本剛)

アクセス

天の真名井は建布都神社の東側にあります。建布都神社までのアクセスについてはこちらをご覧ください。

近隣のスポット

あわせて読みたい

参考文献

古事記 / 倉野憲司 校注(岩波文庫)

目次