徳島県阿波市市場町大影のとある山で見ることが出来るという「ハート形の桜」。昨年の夏の終わりの、まだまだ日差しの厳しいとある日にこの桜についてお聞きしていたのですが、とても印象的なお話しでしたのでしっかりと記憶しておりました。そして先日、この桜の情報をご提供くださった方(Aさん)にアポイントをとり、大影地区のお宅を訪ねてまいりました。
情報をご提供くださった方のご意向により、詳しい住所は非公開とさせていただきます。
大影の山に咲く、ハート形の桜
「松本君こんにちは、よう来てくれたねえ。ほな、こっち来てみてください。あそこなんじゃけど、見えるかな?」
桜の花咲く4月のある日、久しぶりにお会いしたAさんが指さすその先に「ハート形の桜」がありました。
「ほんまは二日くらい前がいちばんきれいやったんやけどねえ。急に気温が上がってしまったから、ちょっと散っちゃったみたいじゃねえ」と、笑顔を浮かべながらも少しだけ悔しそうに話すAさん。確かに、よく見ると少しだけピークが過ぎているようにも見えますが、それでもまだまだ花は残っていますしなにより、周りの鮮やかで濃い杉の木の緑は、桜の花を際立たせているかのようでした。
見れば見るほど興味深い、ハート形の桜。思わず「あのハート形の桜の近くまで行ってみたいのですが、道はありますか?」とお伺いしてみましたが、あの桜の付近は地元の人も足を踏み入れることのない場所なので、それはちょっと難しいとのこと。そんな手付かずの場所に咲くあのハート形の桜の存在に、Aさんが気づいたのはこの2、3年前だそうです。
Aさんのお話はさらに熱を帯び、数々の「とっておき」な情報を教えてくださいました。例えば、このあたりには歌が上手な鳥とそうじゃない鳥がいること。裏山の谷から流れてくる水は冷たくて、ずっと絶えることがなかったこと。おすすめの木々や花々について等々。これらはみな、Aさんが長い年月を重ねてこの風景を楽しんできたからこその発見であり、出合いそのものです。
身近な風景から、あたらしい「とっておき」を見つけるということ。きっとそれは、いつもどおりのありふれた日常に楽しさという色を添えるための欠かせない、たいせつなものなのでしょう。
(取材・撮影・文:松本 剛)
大影のハート形の桜について
住所:非公開(大影地区のどこか)